唯一の手段となって

 彼女がうちに歌を習いに来て何年になるだろう。チェロの生徒として来て他でもピアノ,バイオリン、バレー,合唱,お茶を習ってその上で歌も習いたいとのこと。暇つぶしのように習い事を重ねている印象。発声練習が主でいいんです。歌はどうでも。ということ。だがそののち、2回も脳梗塞を経験し,右手がきかなくなってしまった。すべての習い事を中止し、しばらくのち再びうちに。歌を再開したいと。歌とお茶以外多分できないのだろう。そして彼女の歌は変わったのだ!!それ以外に何もできないという状況がそうさせたのか、声が出て来て歌をきちんと歌える様になったのだ。「もう声は当たり前に出るのだから、美しい声で歌うということに焦点をあてて」と今日わたしは言っていた。何が幸いかなどということは誰にもわからない。驚く様なことは起こるのだ。

嬉しいめざめ

 前述、N君。その後練習を重ねる様になって来た。それはびっくりするくらい。しつけしにくそうな(言う通りにはならない)彼だがお母様は頑張って、練習しなければサッカーをやめさせると脅して練習をさせてくれている様子(彼談)。もともと音楽は好きな彼なのでそうやって練習を続けた結果、弾ける様になりますます練習をするようになったようだ。「エリーゼのために」を発表会で弾きたいと言い出した。当初は無理かなと思ったのだが前回の練習の感じで大丈夫そうと思って許可した。今回喜んで譜面を持って来た。だめだめと思っていてもこういう「めざめ」が来る時はよくある。これが本当に嬉しい瞬間。お母様もご協力本当にありがとうございます。

合格したなら報告を!!

 受験の時期です。受験生が合格するかどうか本当に真剣にこれまでの結果ですから心配します。その心地はお親ごさんと一緒です。正直胃が痛い。そして、滑り止めですが私立の合格発表の日、報告を待っています。報告来ません。・・・・・。・・・・・・・・・・・。たまりかねて電話をします。合格していました。報告してよ!!!!!!と思いました。本人は本命のことばかり気になっていたのかもしれませんが、教える側としては本人のその後の行き場所がどうなるか気が気ではないのです。親の心子知らずみたいなことですが、本当に数日苦しんでいたのですよ。でもよかった。本命頑張って欲しいです。でも間抜けな君、これから気をつける様に!!!

これは私の仕事だろうか

 最近,私の教室の最年少Aくんが荒れている。年長さんなのだがもうすぐ一年生、保育園でも家庭でもそのプレッシャーがかかっているようだ。お母さんも忙しくて練習につき合っていない様子。その上お勉強の方はワークブックなどをやっているようだ。『思考』が強くなっているのだと感じる。思考と感覚のバランスを感じるのはむずかしいのかもしれない。思考が大事にされる傾向があるから。頭を使って疲れている。その鬱憤をレッスンで出してくる。
「甘えているので驚いた」とお母さんはおっしゃるが
(う〜ん、なめられている?)とちょっとわたしは思う部分もある。
レッスンでもワークブックは抵抗なくやるのにいざ弾く段になるとぐだぐだして抵抗する。反対の事ばかり言ったり、時に鼻くそを鍵盤に落とすなどということまでする。
こんな状態を何とかするのは私の仕事だろうか。しつけは家庭の仕事ではないだろうかとふと思う。でもこれはやはり、私の仕事。今直面していることすべてが私の仕事なのだと思いどうすればよいか感じてみる。やれる事はその子と真剣に向かい合う事だけ。今までもそれで色々な子と心がつながり先へ進む事ができたではないか。自身を励まし、心を落ち着かせる。こんなこともあったね、と思える時がくることを信じて。

Nくんが定刻にやってきたわけ

 いっつもレッスンに大幅に遅刻するNくん、5年生。もう5年続けて来ている。お兄さんのレッスンに付いてきていた幼稚園児のころから「突撃Nくん」と呼んでいた。鉄砲玉の様に興味のある物に向かって飛んで行くエネルギーのある男の子。今は「遊び」に熱中するとレッスンを忘れてしまうらしい。我が家の息子も同じ様な鉄砲玉なのでその様子はよくわかる。「親御さんも苦労しているな」と理解もできる。
 一番良く練習してくる男子生徒と一番練習もしてこないNくんのレッスンが隣通し。同じ年数やってるんだよ、というと「まあいいじゃない」とのたもう。まあいいですけど。音楽が好きということで何とか今まで来たし、「先生、何か弾いて。」とよく言うのでレッスンの最後に一曲弾いてあげたりする。どこかにつながりがあれば待つ意味合いがあると思っている。先日はモーツアルトのトルコマーチを聴きたいと言うので弾いてあげた後、一生懸命練習したらこの曲なら弾ける様になるね、と言ったら喜んだ(その前にリストのカンパネラを弾けるかと言ってきた時はさすがに無理といってしまったので)。「まずは遅刻しない事だよね。」と本人が言う。
 そして今日遅刻しないでやって来た。もし本気になったら、音楽が好きで好奇心にあふれエネルギーがあり集中力もそこそこあり器用さも持っているのだもの、できないはずはない。つまり「本気」が足りないだけだよ。今日は「どうして5年も弾いていて僕はこんなに下手なんだろう。」と言う。自分の前のレッスンの彼と自分を比べたようだ。前はおちゃらけたけど私の言った事が心には落ちていたんだね。それは練習時間が足りないだけだよ。と言ったら納得していた。頑張れ!
 
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しろ薔薇

Author:しろ薔薇
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ピアニストの坂田麻里です。
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http://www.marisakata.com

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